Vol.2|Femtechとは?見えなかった課題が市場になるとき 【Amina's Guide】
Femtechとは?
ブームではなく
「選べる状態」をつくる動き
生理や妊娠だけではなく、女性の健康をもっと広い地図で捉えること。 Femtechは、流行語ではなく、長く見えにくかった課題に選択肢を増やしていく動きです。
この記事でわかること
- Femtechの本質と社会的な意味
- 世界で市場が拡大している背景
- なぜ今、日本でも広がり始めているのか
ブームではなく、「選べる状態」をつくる動き
Femtechという言葉を聞く機会が、ここ数年で増えました。 新しい商品、アプリ、サービス、イベント。 日本でも「フェムテック」「フェムケア」という言葉が、少しずつ日常の中に入ってきています。
でも私は、Femtechを単なる流行や商品カテゴリーとして捉えていません。 それはもっと静かで、もっと根本的な動きです。
自分の身体を知ること。 選択肢を知ること。 そして、自分で決められること。
この「決められる感覚」こそ、女性の健康において長く不足していたものではないでしょうか。
1 そもそもFemtechとは?
Femtech(フェムテック)とは、女性の健康課題に寄り添うテクノロジーやサービスの総称です。
生理や妊娠の話だけではありません。 骨粗鬆症や認知症のように女性の罹患率が高い疾患、 更年期やがんのように男女で経過が異なる領域まで含む。
そういう「広い健康の地図」を指す言葉として、使われています。
より広い概念では、「ウィメンズヘルステック(Women’s Health Tech)」とも呼ばれます。
Femtechとフェムケアの違い
Femtechは、テクノロジーやデータ、サービス設計を含めて、女性の健康課題に向き合う広い概念です。 一方でフェムケアは、日常のセルフケア商品や習慣を指して使われることが多い言葉です。
どちらが上位・下位というより、どちらも「自分の身体を知り、選びやすくする」ための入口だと私は考えています。
けれど私がFemtechという言葉に込めているのは、単なる産業カテゴリーではありません。
Femtechとは、“正解を押し付けるもの”ではなく、“選べる状態をつくるもの”。
自分の身体を知ること。 選択肢を知ること。 そして、自分で決められること。
この「決められる感覚」こそ、女性の健康において長く不足していたものではないでしょうか。
2 なぜ今まで広がりにくかったのか
女性は世界人口の約半分です。
それでも、女性特有の健康課題に向けられる研究費は、非常に限られてきたと言われています。 近年の調査やレポートでも、女性特有の健康課題、特にがん以外の領域への研究開発投資は、 全体の中でごく一部にとどまっていることが指摘されています。
さらに、世界のSTEM分野で働く女性は約3割程度。 投資や政治の意思決定層でも、女性はまだ少数派です。
「作る側」「決める側」が少数派であるとき、優先順位はどう決まるでしょうか。
見える課題は、決める人の視点に影響を受けます。
だからこそ女性の身体は、「体質だから」「仕方ないこと」という言葉の中で処理されやすかった。 無関心ではなく、構造の問題だったのです。
3 見えない課題は、対策になりにくい
医学の世界では、データにならない課題は政策になりにくいという現実があります。
見えにくいもの
- 言語化されない不調
- 数値化されない揺らぎ
- 共有されない経験
それらは、時に「存在しないもの」として扱われやすい。
見えないものには、投資も制度も動きにくい。 この構造が、市場が小さく見えていた理由でもあります。
けれど、本当にニーズがなかったわけではありません。 ただ、言葉になっていなかった。 データになっていなかった。 そして、選択肢として並んでいなかったのです。
4 世界市場はなぜ拡大しているのか
世界のFemtech市場は、調査会社によって推計に幅はあるものの、すでに数百億ドル規模、 日本円で数兆円規模とされ、今後も高い成長が見込まれています。
課題が急に生まれたわけではありません。 長年存在していたニーズが、「市場として認識された」のです。
1. デジタル技術の進展
アプリやウェアラブルによって、身体の変化を継続的に可視化できるようになりました。
2. 個人課題から社会課題へ
生理や更年期は、生産性、離職率、少子化、医療費とも結びついています。
3. 共通言語の誕生
“Femtech”という言葉が、点在していた取り組みを一つの市場として見えるようにしました。
市場拡大とは、単に商品数が増えたことではありません。 “使える状態”を整える仕組みが広がったことなのです。
5 ブームとの違い
日本でもフェムケア商品が注目され始めました。 それは重要な第一歩です。
しかし、ブームは商品に焦点が当たりやすい。
Femtechの本質は、土台の設計にあります。
製品が「選択肢」になるために必要なこと
- 比較できる
- 相談できる
- 継続できる
- 生活に組み込める
それが整ってはじめて、製品は「選択肢」になります。
派手な革命ではなく、静かな更新。 それがこの動きの本質です。
6 なぜ今、日本でも広がり始めているのか
日本でも変化は始まっています。
声が増えました。 共有が増えました。 データが集まり始めました。
そして企業や行政も、この分野を「ニッチ」ではなく「成長領域」として見始めています。
これまで「個人の問題」とされてきたことが、問い直され始めています。
生理痛で仕事や学校を休むこと。 更年期の不調でキャリアを調整せざるを得ないこと。 妊活や不妊治療の負担を、個人だけで抱え込むこと。 尿もれや性交痛のような、話しにくい悩みが見えないまま残ること。
それらは本当に、個人の努力だけで解決すべきことなのでしょうか。
私は、そうではないと思っています。
7 fermataの視点
日本では、 「これくらいは病気じゃない」 「大げさにすることではない」 という言葉が、いまも自然に使われます。
体調が悪くても、周りに迷惑をかけないようにと、自分の中で収めてしまうことも少なくありません。
それは強さでもあり、社会を円滑に保つ知恵でもあります。
けれどその結果、うまく言葉にできない不調が、誰にも知られないまま残ることもあります。
私は公衆衛生の視点から、個人の選択肢は社会の設計によって左右されると考えています。
だからこそ、女性の健康を特別扱いするのではなく、日常の延長線上に整える。
日常の延長線上にあるFemtech
- 普通に比較できる
- 普通に相談できる
- 普通に選べる
大きな革命ではなく、静かな構造のアップデート。
それがFemtechの本質だと思っています。
8 まとめ:Femtechは流行語ではありません
Femtechは流行語ではありません。
女性は人口の半分。 けれど、女性の健康課題に向けられる研究や投資は、長く十分とは言えませんでした。
このギャップを埋める動き。 長く見えにくかった領域に、選択肢を増やしていく動き。
それが、私にとってのFemtechです。
理解することは、自分を縛るためではなく、未来を選ぶため。
その未来は、もう静かに動き始めています。
自分の身体を知ることから、
選択肢は広がっていく。
Amina’s Guideでは、Femtech、フェムケア、セルフケア、女性の健康にまつわるテーマを、 日常の言葉で少しずつ紐解いていきます。
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