Vol.2 Clue|“測る”ことで、私たちは何を取り戻すのか。Clueという選択肢
本日ご紹介するClue公式サイトはこちらからご覧いただけます。
1|なんとなく、を置き去りにしてきた私たちへ
生理や体調のことを、
私たちはいつから「なんとなく」で片づけるようになったのだろう。
少し重い気がする。
今日は気分が上がらない。
きっと疲れているだけ。
忙しい日々のなかで、小さな変化を後回しにすることを、
私たちはいつの間にか覚えてしまった。
私自身も、そうだった。
2|Clueという、静かな道具
Clue(クルー)は、ドイツ・ベルリンで生まれた
月経・体調トラッキングアプリだ。
生理日、出血の量、痛み、気分、体調。
日々の変化を、とてもシンプルな操作で記録していく。
特別なことは何もいらない。
ただ、少しだけ自分の体に注意を向けるだけ。
それは、自分のリズムをあとから振り返るための、静かな道具だ。
3|まだ言葉がなかった頃
このアプリをつくったのは、Ida Tin(イダ・ティン)。
「Femtech」という言葉を世界に広めた人物として知られている。
Clueが生まれた頃、
女性の健康は、まだ投資や技術の対象とは見なされていなかった。
世界を自転車で旅していた彼女は、
「自分の生理や体調が分かっていれば、
旅や仕事の予定を、もっと立てやすいのに」と感じたそうだ。
けれど、投資家から返ってきたのは、
「生理を管理して、何になる?」
「そんなにニーズがあるの?」
という言葉だった。
Female × Technology —— Femtech。
この言葉が、彼女の考えを世界に伝える“翻訳”になった。

左:Ida /右:Amina(2024年 Femtech Fes! にて)
4|感覚を、記録へ
Clueが変えたのは、機能ではない。
体との距離だ。
「なんとなく違う」
「いつもと少し違う気がする」
そんな曖昧な感覚に、
“記録”という選択肢を加えた。
診断はしない。
けれど、医療へ向かう一歩手前に、確かに立っている。
5|未来は、ある日突然やってこない
こんな話がある。
Clueは、190カ国以上のユーザーから、
主に生理や体調に関するデータを集めている。
もちろん、ユーザーの同意のもとで、だ。
そのビックデータを使った研究から、
「この人は、そろそろ医師に相談にしに行くだろう」
「特定の疾患の可能性が考えられる」
そんな兆しを、事前に捉えられる様になってきたという。
未来を当てるのではない。
ただ、日常の延長線上にある変化を、
見逃さずに拾えるようになった、ということ。
6|予防は、教えられてこなかった
女性の健康には、
本来「予防できる」「もっと早く気づける」ことが多い。
それでも多くの人が、
症状がはっきりするまで、
生活に支障が出るまで、
婦人科に行かない。
それは、私たちが無関心だからではない。
気づく経験も、
学ぶ機会も、
背中を押す環境も、
ほとんど用意されてこなかっただけだ。
7|データが、私を病院へ連れていった日
私自身、Clueを使ってきた中で、
忘れられない経験がある。
産後しばらくして、不正出血が続いた。
最初は「そのうち落ち着くだろう」と思っていた。
でも、記録を振り返ると、
出血の量も期間も、明らかにいつもと違った。
データとして残っていたからこそ、
「これはおかしい」と判断できた。
病院で、アプリを見せながら説明すると、
医師はすぐに状況を理解してくれた。
(Clueに記録していた私自身のデータ。赤く表示されているのが出血があった日で、色の濃さがその量を示している。出血量は月経カップを使って把握していた。)
8|未来の自分に、選択肢を残す
日本にも、生理管理アプリはある。
でも、「記録したその先」をどう使うか、
その議論は、まだ十分とは言えない。
Clueは、
日常と医療のあいだに立ち、
「行ったほうがいいかもしれない」という
判断材料を、静かに差し出してくれる。
“測る”ことは、管理することではない。
自分を縛ることでもない。
それは、
未来の自分に、選択肢を残すこと。
正解はひとつではない。
でも、選べるというだけで、
私たちは少し、安心できる。
次回もまた、
そんな「世界の選択肢」を、ひとつ。
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